2024年11月21日

[訪問記] Arnhem Land Report (2006年11月)

「[旅日記]2006.11.9アーネムランド到着!」

今朝早くにケアンズに到着。
機内はたまたま隣2席が空いていたのでエコノミーなのにスカイベット(新しいカンタスのビジネスクラスのシート)並に結構眠れた。

到着後、レンタカーをピックアップしていざナランボイの市内へ。まあ、さほど変化することもないので、久しぶりの里帰りみたいなものかな?明日から5日間、この大地からまたたくさんのエネルギーをもらって来たい。

「[旅日記]2006.11.10アーネムランド2日目」

すっかり機内の寝不足も解消し、アーネムランドの朝は気分も爽快。やっぱりこの地に来ると元気になる。

午前中、とりえあず買い付け最優先でイリカラ・アート・センターへ。お手ごろ価格のイダキと上質ジャルー、そして再生用のクラックの入ったイダキ合計約30本を選んだ。
今回の買い付けもかなり満足のいく内容だ。

そして昼前にいったんホテルへ戻り、ジャルーの妹であるダンガルに電話を入れた。実は先月グルウィウィ一家は以前から住んでいたスキービーチから引っ越しをしたのだ。訪問者が多く、他のクランの人と少しもめたらしい。まあ、ジャルー一家ぐらいだもんな、ヨルング以外の人を積極的に受け入れているのは。

彼らの新しい住まいはまだ建物が足りずテントで寝ている人たちも多い。でも海はきれいだし、やっぱり良いところだ。
将来的には家をもっと海辺の近くに建ててもらって住むそうだ。

ジャルーも以前よりかなり調子が良いようだ。少し痩せて(というより締まって)元気になっていた。

そして恒例のおみやげ渡しは、毛布3枚、たばこ1カートン(これがある意味彼らの場所に来るパスポートのようなもの)、スーパーで買った撮りの丸焼き2つ、アップルジュース、LEDライト付きライター1つ、そして前回訪問したときの写真。

皆喜んでくれてよかった。

Winiwini Gurruwiwi

そしてダンガルやラリー(ジャルーの息子)たちと海岸を歩きながらいろいろとこの地の話を聞いた。今は東風が吹いているけどもう少ししたら西風が吹いてくるとか。

とても良い時間だなあ。

それからジャルーの孫であるヨーチンがすっかり大きくなっててびっくり!まだ1歳なのにイダキを吹く。前回はまだイダキを加えていたけど、ジャルーの真似をしてスティックを叩きながら音も「ブッ、ブッ・・・」と出してた。
彼が20年後立派なイダキ奏者になっていたらきっと日本に呼びたいなあ。

その後戻ってきて、自然とジャルーからほぼ1対1でイダキマスタークラスを受けた。いつもは参加者に譲って自分は遠目から見ていたのだが、久しぶりに自分の演奏を聴いてもらおうと、彼の教えてくれた赤カンガルーの曲の3部作を教えてもらった。
いつもきちんと教えてもらうのがちょっと恥ずかしかったけど、今回は思うところありしっかり教えてもらおうと思った。

また明日以降も教えてもらおう。

それからジャルーから2本のイダキと、ビルマ1セットを購入した。

明日は何があるか・・・。

「[旅日記]2006.11.11アーネムランド3日目」

昨夜到着した2名を加えて6名で朝からジャルーのいるところへ。
昨日から行く予定だったGikal行きを明日朝到着する最後の参加者を待ち、皆で移動することになった。Gikalはジャルーの故郷であり、ジャルーたちが将来永久的に移り住みたい場所だ。私も2年前に行くことができて、ウミガメ猟やイダキカッティング、ブングルのデモンストレーションなどを体験できた。
今回はどんな滞在になるだろう?車で悪路を3時間走るが、とても楽しみに思っている。

さて、今日はなにをしたかというと、午前中は海で釣り。釣りといってもアーネムランドの釣りは竿をつかわない。糸を束ねた丸いリールだけを使っておもりと餌が付いている釣り糸をカウボーイの投げ縄のようにぐるぐる回して遠くへ飛ばす。そしてゆっくり糸をたぐり寄せて釣るのだ。

私は過去何度か挑戦したけど、一人で1匹釣ったことがない。
最初はまともに餌を投げることさえできなかった。
今回は上手く投げることができて、餌をつつく魚の感触も結構ある。これは行けるかな?と思っていると、かかりましたっ!
体長20cmぐらいだったけど、最終的に2匹つり上げた。
1匹を一緒に参加してるトムさんがさばいて刺身で頂く。やっぱりつり上げたばかりの魚は旨い!!

その後ダンガルが大きなムーンフィッシュと呼ばれる魚を2匹釣り上げ、1匹は今夜の我々のおかずになった。

そして午後はまたジャルーたちの元へ。
雑誌の撮影のため、海岸で演奏をしてるジャルーの撮影会を行った。炎天下にもかかわらず快く協力してくれたジャルーに本当に感謝したい。

いよいよ明日はGikalへ。
参加してる女性軍はちょっと心配顔だけど、私個人としてはとてもわくわくしている。というわけで明日の日記のアップはできませんのでGikalから戻ってきたらアップします。

「[旅日記]2006.11.12アーネムランド4日目」

あれ?今日は日記はアップしないんじゃなかったの?
そう思っている人もいるだろう。
実はGikalまでは行かなくなったのだ。
朝、ジャルーの所に行くと、ドフィヤ(ジャルーの奥さんであり私のヤッパ(姉)に当たる人だ)に呼ばれた。今日1泊する予定のGikalは日帰りで行くことになったという。まあ彼らの約束は必ず変更になるから慣れっこだが。イダキの木を切りに行き、レインボークリークで泳いでGikalに顔を出して帰ってこよう、という。もちろんそう彼らがしたいのならそれに反対する理由はないし、参加者の中には電気も水道もないところでキャンプということにちょっと不安を覚えていた人もいたので、何人かはややほっとした様子だ。

さて、それなら善は急げと出発しようと思っていたら、ジャルーの息子であるラリーが一緒に行くと言っておきながらハンティングに行ってしまう。彼が帰ってくるのを待って出発しよう、ということになったが、なかなか帰ってこない。仕方ないので何人かで探しに行くことに。その間残りの参加者は子供達の遊び相手となる。やっと戻ってきたら、ラリーの車のエンジンがかからなかったり(結局押しがけをしてかかった)、ジャルーの車にカートをつけたりして、どんどん出発が遅くなる。そして必要なもの(水とか食料とか、イダキを切る道具とか)を買って、なんだかんだで11時半は過ぎていた。

それでもそこからまずGikalへの道のりを走る。空港へ向かう道を空港の直前に左へ次第に未舗装道路になり、ガーマフェスティバルの会場へはいる道の手前で左に。そして次第に道は細くなり、ユーカリ林に車1台が通れるほどの小道をひたすら走る。

2時間ぐらい走ったところで、車を止めてイダキカッティングに森へはいる。ジャルーはどんどん奥へ入っていった。そしてドフィヤから呼ばれて私は彼女と行動をともにすることになる。するとドフィヤはどんどん木を切り始め、そのたびに木を倒すのに使われ、のこを入れるのに使われ、みるみるうちに11本のイダキを切り倒した。「もう充分でしょ?」そういったら「いや、クリスマスの前に車を買わなきゃいけないから、あと2本切り倒すよ」と。厚さと労働ですっかりばててしまった。切るところまでならいいのだがそれらのイダキを車の所まで運ばなくてはならない。これが大変だ。他の参加者に助けを求めて、運びきった。もうバテバテだ。

それを見てダンガル(ジャルーの妹)が「今日はよく眠れるよ」といったので「いいや、きっとヤッパの悪夢を見るね」と言い返したら彼女は大爆笑していた。

結局Gikalにはたどり着けず、レインボークリークでの水浴も時間が無く中止となった。

でも1日これだけ体を動かしたらホテルに帰ってからの食事も旨かったし、満天の星空の下で入るややぬるま湯のプールも気持ちよかった。

明日は切ってきたイダキの製作の手伝いをする予定。

[旅日記]2006.11.13アーネムランド5日目」

今日は朝からジャルーのところでイダキ製作の手伝いをする。
到着するとすでに数本のイダキの樹皮を落としていた。
朝から働き者である。

一家総出で、手分けして作業をする様は、本当にすごい。
わずか3歳の子供もよく目にする光景なのか、一生懸命手伝うふりをする。
将来のイダキ・クラフトマンとして有望である。

ジャルー一家と過ごすこのひとときは心地よい海風を受けながら、ゆったりと時間が流れる。そして子供の泣き声、母親のしかる声も心地よささえ感じる。

そして何よりも、皆が私たちに声をかけて、彼らの文化を教えるように話をしてくれる。
まず、この子はあなたの誰々だ、とかあの人はあなたの誰々だからポインズンカズン(口を利いては行けない親戚というのがあるらしい)だとか、覚えられないくらいいろいろな人を紹介してくれた。

釣りに行っていた人を迎えに行き、戻ってくると成り行きでジャルーのイダキ・ワークショップ(しかも最初はマンツーマン!)がはじまった。いろいろなリズムを聴かせてくれてそれをまねるように言われた。次第に複雑なリズムにちょっと当惑したけど、彼の教鞭に熱が入ってくる。やがてこんな話をしてくれた。「日本人は私のいうことをよく聞いてくれる。そして良いハートを持っている。バランダ(白人)は少し難しい。彼らには私がやっていることを理解できないようだ。日本人はリスペクトがあり、熱心だ。NO.1のハートの持ち主だ。グマチの人間は女性がイダキを吹くことを拒否するけど、私は女性でも歓迎する。君たちは女性でもギターを弾くだろ?同じ事だ。学びたいなら皆を歓迎するよ。」この彼の寛大さが今の日本のイダキシーンを発展させてくれたのだと思う。ジャルーに本当に心から感謝している。

Djalu Gurruwiwi

いつも感じることだが、訪問者とジャルーたちのようなヨルングの人たちには隔たりがある。彼らは要求されることを嫌う。こちらから一方的に「これがしたい、あれがしたい」と要求するのはまず、彼らと良い関係を築いてからすべきことだ。アーネムランドは観光地ではない。まずアーネムランドに入るきっかけを見つけて、彼らと仲良くなることだ。彼らのことを手伝いにいくと思った方がいい。彼はこうして欲しい、ああして欲しい、と日常的なことはよく要求する。「これを押さえておいてくれ」「それを取ってくれ」「街まで連れて行ってくれ」「コーラを買ってきてくれ」・・・。その要求にできるだけ応えてあげれば、彼らは心を開いてくれる。そこから少しずつ自分がどうしたいか話をしていくといい。

彼らから学ぶことは山ほどある。学べば学ほど良い体験を与えてくれる。

今回の収穫はジャルーから赤カンガルーの曲を習ったこと、アイロンバークのジャルー製作のビルマを得ることができたこと、そして釣りで2匹釣ったこと。ジャルー一家とイダキを切りに行き手伝えたこと、きれいな海でゆったりとした時間を過ごせたこと・・・。

あげればきりがない。

あと明日夜ダーウィンへ移動するまでの1日が最後の日。
もっといろいろなことを吸収したい。

Vernon Gurruwiwi

「[旅日記]2006.11.14アーネムランド最終日」

いよいよ今夜アーネムランドを去る。
あっという間にすごした約5日間だが、また新たにいろいろなものを吸収できたと思う。

午前中はアートセンター、午後はジャルーの所へ。

最後に彼が行ってくれた言葉、

「おまえに与えるイダキの中には必ず「何か」が入っている。それはよくわかっているだろ?おまえは私の考えをよく理解しているから。」

まだまだ教えて欲しいことがたくさんあるから、また訪問するよ、ありがとう。

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