グルーテ・アイランド初日
Groote Eylandtと書いてグルーテアイランドと読む。
ここは南東アーネムランドに位置する島だ。
この地の話はガーマフェスティバルの時に紹介されたCD付きの本で知った。
そこにはモノクロの写真があって、イダキを吹く男性と長老達がうたう様子が記されていた。
また後に、グルーテの儀式の様子を表したビデオを入手した。
ずっと前からグルーテへ行くあこがれがあった。
しかし、この地に行く手だてがなく、現地で必要とされる職業に就かない限り、訪問者を受け付けていないという話を聞いていたので、訪問は難しいか、と感じていた。
ところが、それがひょんなことから実現した。
なんとグルーテアイランドにリゾートが出来たというのだ。
未開の地にリゾート???
とにもかくにも、観光局の仕事でそのリゾートへの視察に参加できることになった。
グルーテアイランドへはダーウィンから小型飛行機で1時間半。
夕方ダーウィン空港を出発する。
機内から見る空の上半分がオレンジ色に染まるころ飛行機は徐々に降下する。
その飛行機からなんと街の灯りが見える!
未開の地なのに、あんなに明るい街の光があるとは!
その光から少し南西に離れた方に着陸した。
空港は昔のゴーブ空港のように掘っ立て小屋のような建物が1つあるだけだ。
今はAir Northというローカルの航空会社が運行しているだけだ。
車は約20分でリゾートへ。
途中ゴーブのような町並みがあるのをみて驚いた。
未開の土地だと思ったところに街がある。
その後わかったことだが、40年前からこの地にマンガンの鉱山があるそうだ。
そのマンガンの80%は世界に輸出され、多くは日本にやってくるそうだ。
びっくりした。
そしてなぜこの地にリゾートが出来たか。
実はこの鉱山、向こう20年のうちに閉山となる。
そのため、今まで産業を鉱山に頼っていた地元先住民は、最初、観光客を拒み続けてきたが
将来を考え、観光業を設立することを考え始めたそうだ。
リゾートに着くと地元のアボリジナル達が待っていた。
「HELLO!」と声をかけてきたので、ヨルングの言葉で返したらびっくりしていた。
この地には独特の言語があるが、一部の人たちはヨルングの土地出身で、ヨルングの言葉を理解する。
この日、歓迎の踊りが行われた。グルーテの人たちの踊りはビデオしか見たことがなかったので、興奮した。踊りやイラガ(ディジュリドゥ)の演奏は、とても北東アーネムランドの人たちに似ていた。ただ多くの観光客になれていない若者達はとてもシャイで、踊りを恥ずかしそうに踊っていた。
演奏後、長老にヨルングの言葉で話しかけた。
彼はびっくりしていたが喜んでヨルングの言葉で応えてくれた。
彼はもともと北東アーネムランドから来たそうだ。
どんな形であれ、彼らと出会えてよかった。
グルーテアイランドの朝。
かなり暑い!
今日は1日アボリジナルカルチャーツアーに参加。
午前中は海岸沿いを今日が初めてのガイドという若いアボリジナルのお兄ちゃん達4名と歩く。
普段からシャイなのに、それでも一生懸命話をしようとする。
知っている知識を一生懸命説明する。
途中、ワニの足跡を見つけたり、草木の説明をしてくれたり、
槍投げのやり方を教えてくれたり。
彼ら4人の中で1人だけ無口なガイドに気がつく。
彼は他の3人とポインズンカズン(毒いとこ)にあたるため、しゃべってはいけないという伝統がある。
でも彼らは昔からよい友人だという。
それなのに彼が他の3人と話をするときは間にいる誰かに話して伝達するんだそうだ。
その後、アートセンターへ。
グルーテアイランドのアートセンターは初めてだったのでちょっと興奮した。
でもサイズ的には小さなお店程度の大きさだったけど。
でもそこにはイラガ(この地の伝統的なディジュリドゥ。イダキとよく似ている)やアイリンバ(拍子木)やアートが売っている。
特にイラガとアイリンバはなかなか手に入らない代物なので、2つずつ購入した。
そして午後は、ロックアートサイトへ。
ここからはベテランのアボリジナルの夫婦がサイトに案内してくれた。
ちょっとした岩を積み上げたような丘を登ると、底には雨宿りが出来そうな洞窟のようなくぼみがある。その天井には赤や黄色のオーカを使った壁画がびっしりと描かれていた!
カカドゥなどで見たアートとはちょっと違う感じの、古いアートだった。
聞けばそのアボリジナル夫婦の祖父母より前の世代がが描いていたものだそうだ。どのくらい古いものかはわかっていないそうだ。
久々に壁画を見て鳥肌が立つほどの感動を覚えた。
夕方は、またダンスを見せてくれると言っていたけど、結局は起こらなかった。まあ、アボリジナルの世界はこんなものである。
観光客を受け入れたのはこれで2回目。
おそらく観光客としてグルーテに入った初めての日本人になったかもしれない。観光客を受け入れることによって彼らの文化が若い世代に受け継がれていくことを切に願う。
とても貴重な2日間でした。