Arnhem Land Report (2020年1月14日)

すっかりアーネムランドの滞在も慣れてきた。なぜか身体中が筋肉痛で、虫刺されがひどくなってきたこと以外は、問題なくことは進んでいる。

今回の収穫は、なんと言ってもイダキペインティングをじっくり見ることができていることだ。イダキを製作する現場も貴重だが、それ以上にペイントは学ぶことが多い。今回はDjaluの娘達が頑張ってくれて、特にZeldaはトータル4本のイダキをペイントしてくれた。今日のZeldaのイダキペイントについては後ほど話をするとして、まずは今日の出来事。

朝、ややゆっくりのスタート。そのままアートセンターへは立ち寄らず、まずはWallaby Beachへ。今日も天気の良い1日だ。

到着するとDophiyaがいた。手を振ると、すっと右手をあげてちょっとだけほほえみ、すぐに裏庭へ歩き出した。そう、まるで田舎の実家に帰ったときの母親のような対応(笑)。以前は飛び上がって喜んだけど、もうすっかり慣れっこだ。

昨日預けたペイントが終わってるか確認したけど、Selmaの1本は完成。Zeldaの2本は昨日からあまり進んでなかった。もう1本はまだ木肌のまま。Zeldaに聞いたら「昨日はいろいろやっかいなことに巻き込まれてね。ごめんね。今日仕上げるよ」と。

Djaluも出てきた。珍しくTシャツを来ている。青いTシャツにいるかの絵。Dophiyaのお土産らしい。嬉しそうだった。なるほど、彼はやっぱりDophiyaがいないと元気がないんだ。

Dophiyaが「Zeldaにカプチーノを買ってきてほしい」と言われたので、つきあうことに。まあZeldaには今回特にお世話になってるのでカプチーノぐらいはごちそうしてあげよう。お店はWallaby Beachから車で5分ぐらいのSki Beachにあるコミュニティストア。Ski BeachはDjalu達が元々住んでいた場所。その後East Woodyに数年住んで、今のWallaby Beachに来た。去年訪問したときはNhulunbuyの町中に家を買ったと大はしゃぎしていたが、その家は結局は買わなかったらしい。なんでもDjaluは他のファミリーと一緒にいたいと。やっぱりYolnguはFamilyの絆が強いんだろうな。

Zeldaに今日中にイダキを仕上げて欲しいと約束して、いったんWallaby Beachを離れる。

アートセンターに戻り、時間が合ったので購入したイダキの採寸などを進める。やはり今回仕入れたイダキは本当に素晴らしいものばかりで満足いくものだった。半分以上は価格帯は高くなるが一生もののイダキが多数ある。早くみんなにお披露目したい。

そんなことをしているうちにあっという間にお昼時間が過ぎ、2時を過ぎた頃、雷の音が鳴り始める。天気が怪しくなってきた。再度Wallaby Beachへ向かう。遠くに黒い雲が見える。途中寄り道をして到着したのが3時前。もうできてるかな?とのぞいてみると、まだ完成はしていないけどずいぶんと進んでいた。

Zeldaの2本はすでに構図はできあがっていてあとは白のラインを入れる一歩手前だった。もう1本もシンプルだけど赤く塗られていた。

それからは、しばらくZeldaのペイントを見てた。遠くで雷鳴が響き渡る。すっと涼しい風が通り過ぎる。
彼女はこう説明し始めた。

「私はね、ペイントをするときは旅に出ている気持ちになるの。構図をこう描いてみようとか、こういう絵を入れようとか、Baywara (雷)が教えてくれるのよ。だって私はBaywaraからこういう絵を描きなさいと命じられているのだから。だからどんなに時間がかかってもペイントしているときは全く疲れないわ」と。

納得した。だから彼女の描くイダキのアートは大好きなんだ。

今回描いている1本は波模様のミンチ(紋様)が入っている。これは虹色に輝く水面だそうだ。ちょうどWitiji(虹蛇)が通り過ぎたあとらしい。そしてもう1本は、蓮の芽から白い泡が出てきている絵柄だそうだ。ちょうど蓮の芽に隠れてWitijiが潜んでいるそうだ。水、蓮の芽、白い泡、と3つの絵柄が描かれている。なんと上部の黒の部分はあなたが塗りなさい、と私が初めてイダキにペイントをさせてもらった。もちろんただベタに黒を塗っただけだけど。

残った1本は誰が仕上げたか、というとちょうどZeldaの所に来ていた親戚のYolnguの女性。まだ10代か20代前半だろうか。でも白人の子供が一緒にいた。Zeldaが「あなたもペイントしてみない?」とその女性今回が初めてのペイント。おいおい、いくらシンプルなペイントでいいよ、と言ったからってせっかく購入したイダキを台無しにしないでくれよ、心の中でつぶやいた。

赤色に黄色い帯が2本その間に黒のラインが3本、その色と色の間に白を入れる。「白い線を入れるのは怖いわ」って、こっちはもっと怖いぞ。
ドキドキしながら見てたら、真剣に集中して線を入れていく。なかなかいいぞ!時間をかけて見事に描き上げた。ほっとした。よく頑張った。これからクロスハッチングも覚えていくだろうし、もしかしたら将来すごいアーティストになるかもしれない。そうなったらこのイダキは初めての作品となる。イダキのペイントにもいろいろな背景があるのだ。

結局仕上がったのは、夜7時前。疲れないと言ったZeldaもさすがに足をもんでいた。ありがとうZelda!

さて、Zeldaがペイントしている間に1度だけDophiyaと町に行った。スーパーになにやら支払があるらしい。自分は自分の買い物をしてたら、一緒に来てたLinaがやってきてなにやらスタッフに話しかけている。事情を理解したスタッフは一目散に裏へ走って行った。

なんとスーパーの裏で酔っ払った若いYolnguが、寝ていた年配のYolnguに殴りかかったらしい。私が外に出たときに、10人ぐらいが集まって心配そうに殴られた人に駆け寄っていた。そして私がすれ違った痩せた男性を指さしていた。その男性が殴ったらしい。程なくして警察が来てあっという間に手錠をかけた。

こういうことはよく起こることだが、ほとんどのYolnguは良くないことだと理解している。酔っ払う→犯罪を犯す→牢獄で寂しくなって自殺をする。Yolnguと白人を比較するとYolnguの方が圧倒的に多いそうだ。飲酒と自殺、それとドラッグはYolnguの社会では深刻な問題だ。いまでこそNhulnbuyでお酒を買うためには登録制で1日の販売量も決められている。昔は無尽蔵に買えたのだから、本当に酔っ払いは多かった。知っているYolnguもお酒で駄目になったり、自殺したりと言う人を何人も知ってる。問題はなくならないかもしれないけど、できるだけ幸せに生活してもらいたいな。

実質あと1日。明日もこの地が平和でありますように。